【ネタバレ考察】日本神話から見る「超探偵事件簿レインコード」
今回は、Nintendo Switchで発売された推理アクションゲーム「超探偵事件簿レインコード」を日本神話の視点から読み解いていきます。
まだ「超探偵事件簿レインコード」をプレイしたことがない人は、こちらの記事を先に読んでみてください。
それでは、ネタバレOKの人のみ、続きをどうぞ!
アマテラス社
アマテラス社は、日本神話の太陽神「天照大神(あまてらすおおみかみ、あまてらすおおかみ)」が名前の由来であると考えられます。
黄泉の国から逃げかえったイザナギ神が、禊(みそぎ)をした際に生まれた神で、神の住む国「高天原(たかまがはら)」を統べる主神でもあります。
太陽が見えない街で、太陽神の名前が由来の会社が統治をしているというのは、なかなか奇妙ですね。
複数の要因で社会倫理が捻じ曲げられてしまう街の様子は、さながらアマテラスが隠れて世界から光が消えてしまった神話の物語を連想します。
「複数の要因で」と書きましたが、この要因は、主に以下の2つが挙げられます。
- アマテラス社保安部部長のヨミーが、絶大な権力で悪政を敷いている
- マコト・カグツチによって「ホムンクルスの真実」が隠蔽されているため、これに関わる事柄はもみ消される
ヤコウ・フーリオ「なんつーか、夜明け間際がずっと続いているような雰囲気っていうか…」
「超探偵事件簿レインコード」より引用
雨が降り続き、暗い空で覆われたカナイ区は、真実に届かない・見通せない様をよく表していますね。
ゲームプレイ中は、1日中夜の世界を歩いているようでした。
「真実を追い求める」ゲームといえば、「ペルソナ4ザ・ゴールデン」(学園RPG)も連想します。
カナイ区
カナイ区の名前の由来は、ニライカナイだと推測しています。
ニライカナイは日本(本州)神話ではなく、沖縄県の民間伝承に由来する言葉です。
神の国でもあり、死者の国でもある理想郷というのが、民間伝承に伝わるニライカナイです。
- 3年前の事件がきっかけで、大勢の死者が誰にも知られずに眠る街
- ホムンクルスにとって安全に生活できる「理想郷」
- アマテラス(社)によって統治された「特別自治区」
彼らに自覚はなくとも、ホムンクルスにとっての理想郷であった「カナイ区」は、まさにふさわしい名前だったのでしょう。
そして、死者の国でもあり、理想郷でもある「カナイ区」を統治しているのが、
- アマテラス社保安部長「ヨミー・ヘルスマイル」
- アマテラス社社長「マコト・カグツチ」
の2人ということになります。
ゲーム開始時は、ヨミーの強い影響力により、理想郷であったはずのカナイ区がそうでなくなっている状態です。
後述する「ヨミー・ヘルスマイル」の欄でも詳しく解説します!
ユーマ・ココヘッド(主人公)
「レインコード」の主人公である彼は、日本神話由来の名前ではないと考えられます。
しかし、彼の名前は英語では「Yuma Kokohead」と書きます。
「head」は「頭」を意味します。
そして、音が同じ「co」は「共同の、相互の」という意味があります。
(例:co-worker同僚、co-operation協力など)
- ラーメン屋のユーマ・ココヘッド
- プロローグで登場したナンバー1
「死に神ちゃんと契約した主人公は、2人の人物と名前を共同で使用している」という意味で
Yuma Coco–head→Yuma Kokohead
という名前になったのではないかと考えています。
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マコト・カグツチ
カグツチは、火之迦具土神(ひのかぐつちのかみ;加具土命)が由来と考えられます。
カグツチ神は、日本神話のイザナギ神とイザナミ神の子で、彼ら間でできた最後の子供です。
火の神であるカグツチ神を生んだことが原因で、イザナミは亡くなってしまいます。
嘆き、怒ったイザナギは、カグツチを亡き者にしてしまいました。
太陽神アマテラスの名前を由来とする会社の社長が、火の神であるカグツチ神由来の人物というのは、ユニークですね。
クローンのホムンクルスという、社会倫理から逸脱した存在
生まれた際に父親(イザナギ神)から生誕を拒絶される
マコト・カグツチは、その生い立ちから「(社会規範、倫理規範から外れた)生まれることを望まれなかった者」ということが、カグツチ神との共通点として挙げられます。
注釈
マコト・カグツチは統一政府によって望まれて生まれましたが、「彼の生誕が人類すべてにとって祝福されるかどうか?」というと、残念ながら疑問符がついてしまいます。
また、ゲーム中のマコト・カグツチ自身が、自分の生まれを肯定的にとらえているようには見えません。
このため、マコト・カグツチを「生まれることを望まれなかった者」として定義しました。
また、メタ的な考察として、
マコト・カグツチは、ユーマと対になる「裏の主人公である」
とも捉えることができます。
「マコト」という名前は、ゲームシナリオ担当の小高和剛氏の別作品「ダンガンロンパ」の主人公や、ダンガンロンパV3の「マコトくん」というゲームの世界観を体現するキャラの名前と共通しています。
マコト・カグツチも、「レインコード」の世界において重要な役割を果たしていることから、
- 「超探偵事件簿レインコード」というゲームの主人公はユーマ
- 物語における主人公はマコト・カグツチ
という見方もできるのではないかと考えています。
- 起:統一政府直轄の研究所で、ホムンクルスとして生まれる
- 承:アマテラス社社長に就任し、ホムンクルスを保護する施策を打つ
- 転:ヨミーとの対立や、ユーマとの邂逅
- 結:ユーマと対決し、カナイ区住民と共に未来を考える道を選択する
マコト・カグツチは「カナイ区最大の秘密」にすべての段階で直接的・間接的に関りがあります。
ヨミー・ヘルスマイル
アマテラス社保安部部長のヨミー・ヘルスマイル(Yomi Hellsmile)。
名前の由来は、
- ヨミー:黄泉
- ヘルスマイル:地獄(hell)と笑う(smile)
「理想郷を地獄に変え、あざ笑う」という意味に読み取れます。
ゲーム中の彼の行動をたどると、まさにその通りですね
カナイ区の未来のためには、マコト・カグツチにとっても、探偵たちにとっても、ヨミーを退場させることは絶対条件です。
理想郷にこんな悪党が堂々と君臨していたら、いつまで経っても真の平和は訪れません。
ヤコウ・フーリオ
ヤコウ探偵事務所は、「夜行探偵事務所」と書くことがゲーム中に判明します。
名前の由来は「百鬼夜行」だと推測しています。
百鬼夜行は、多くの妖怪が行進する様を描いた絵が由来ですが、多くの場合は不吉な意味としてとらえられています。
カナイ区生まれ、カナイ区育ちのヤコウ所長は、ユーマ達にとって「カナイ区の住民の一人」でもあります。
ヤコウ所長の名前の由来は、3年前にカナイ区で起きた悲劇的な事件の象徴としての意味があるのではないかと考えています。
また、もう1つの候補として、「探偵たち(鬼・妖怪)を引き連れる者」という意味があるのではないかと考えています。
アマテラス社と、社長のマコト・カグツチは日本神話の神が名前の由来ということで、アマテラス社に対抗する存在を先導するリーダーとしての意味も込められている可能性もあります。
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ヤコウ探偵事務所に集まった超探偵たち
レインコード1章では、ユーマを除く4人の超探偵がヤコウ探偵事務所に集合しました。
前述のヤコウ・フーリオを「百鬼夜行由来の名前」と仮定すると、ヤコウ探偵事務所に集まった超探偵たちは、「妖怪・鬼」に該当します。
明確に妖怪にまつわる名前の人物は2人ほどですが、彼らの名前についても考察していきます。
ハララ・ナイトメア
ハララさんの英語名は「Halara Nightmare」です。
名前のハララについては不明ですが、ナイトメア(nightmare)は「悪夢」という意味があります。
日本を含む古今東西の伝説において、悪夢は夢魔や妖怪が起こすものと信じられてきました。
- 悪夢は夜に見るもの
- 悪夢は妖怪が人間に見せるもの(という伝説)
ということから、ハララさんの名前の由来は、ヤコウ所長の名前の由来とも関連付けられるのではないかと考えています。
デスヒコ・サンダーボルト
デスヒコ君の英語名は「Desuhiko Thunderbolt」です。
デス(Desu)は死神(Death)と関連付けられます。
Thunderboltは雷という意味がありますが、日本神話や民間伝承には、様々な種類の雷神がいます。
- 黄泉の国で変わり果てたイザナミ神から生まれた8柱の雷神
八雷神(やくさいかづちのかみ) - スサノオ神
- 「風神・雷神」の雷神
- 平安時代の貴族「菅原道真」 など
日本神話や民間伝承の雷神は、複数の神・妖怪をまとめて指す言葉と言えるでしょう。
- 死神に関連した名前
- 雷神に関連した苗字
なんとなく「妖怪や鬼に関連する名前である」と言えそうですが…。
少しこじつけに近いかもしれませんね。
ちなみに、彼と共に第2章で活躍した「スワロ・エレクトロ(英語名Martina Electro)」も雷や電気(electric)に由来する名前と推測しています。
デスヒコ君との関連が気になるね!
フブキ・クロックフォード
フブキちゃんの英語名は「Fubuki Clockford」です。
フブキ(吹雪)というと雪女を連想しますが、ちょっとこじつけに近い仮説かもしれません。
一方、苗字の「Clockford」は、clock(時計)が入った苗字です。
彼女の実家である「クロックフォード家」は、名実ともに世界の時間を司っていると言っていい強大な力を持つ一族です。
超能力や超常的な技術が多数登場するレインコードですが、彼女の能力は他とは一線を画しています。
「時を司る神様」と言っても過言じゃないね…
クロックフォード家は世界標準時を管理しているということから、「真夜中の午前0時」を連想しました。
もしかしたら夜と関連ある名前と言えるかもしれませんが、ヤコウ所長(百鬼夜行)と直接関連がありそうな名前かどうかは断言できません。
ヴィヴィア・トワイライト
ヴィヴィアさんの英語名は「Vivia Twilight」です。
Twilightは「黄昏(たそがれ)」という意味。
Viviaの元ネタは明確ではありませんが、アーサー王伝説に登場する「湖の乙女(Viviane)」が由来なのではないかと推測しています。
ヴィヴィアンはアーサー王伝説において、重要な役割を果たします。
- アーサー王に聖剣を与える
- アーサー王の最後の戦い(カムランの戦い)のあと、聖剣を返却される
ヴィヴィアさんも、レインコードの物語の「起承転結の転」となる4章で重要な役割を果たしました。
- 西洋の妖怪由来の名前
- 夜と関連がある「黄昏」という苗字
前述のヤコウ所長と関連性が高い名前なのではないかと考えています。
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まとめ:日本神話や民間伝承に由来する名前が多いゲーム
- 「超探偵事件簿レインコード」には、日本神話や日本各地の民間伝承に由来する名前が多い
- カナイ区に雨が降りやまない現象は、アマテラス伸が岩戸に隠れた逸話が由来の可能性
結構こじつけに近い考察もあるけど、意外と当たっている説もあるかな?
個人的には、カナイ区=ニライカナイ(死者の国・理想郷)というのは、当たっている可能性が高いのではないかと考えています。
カナイ区の二面性については、第5章でユーマとクルミが確認した通りです。
クリア後のストーリー考察をした記事もあるので、あわせて読んでみてください!
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
日本史に登場する鬼・妖怪について分かりやすく丁寧に解説されています!